おじいさん・おばあさん

篠川 一雄さん
(西予市/旧:明浜町)
明浜町(現:西予市)の俵津文楽会館で、伝統芸能を守り続けている「すがはら座」の座長、篠川さんにお話をお聞きしました。

●俵津文楽の歴史を教えてください?
起源は嘉永5年(1852年)になります。幕末の動乱期で村の若い者が博打や悪い遊びに耽っておったので、何とか興味を引くようなものを入れなければいけないということで、大阪の方から人形を取って帰って、若者に習わせたというのがひとつの大きなきっかけです。ですから青年の情操教育ということではじまったようです。

一般民衆から愛されて栄えてきておったんですけども、ただ、戦時中は若干衰えたんです。戦後はテレビなどが一般的となり、大衆とかけ離れたものになってきたもんですから、昭和46年頃、後継者が途絶え、公演が出来なくなったような状態があったんです。昭和52年に公民館が立ち上がってくれて、婦人会、ほいから青年団に呼びかけてくれて、現在のような体制になったわけなんです。

1852 伊井正五が操り人形数体を導入
1870 大阪文楽の竹本常太夫(近藤浅吉)が来村し、指導に専念
1886

浜田万蔵・山下松太郎らが八幡浜の「くぬぎ座」を買い入れ「すがはら座」とした

1925 中村勗らが淡路島の市村六之丞一座一式を買い入れ
1959 県の指定を受け、俵津文楽保存会の名称となる
1964 県指定無形民俗文化財の認定を受ける・酒井義満外9名が無形文化財保持者の認定を受ける

●全国的にこういった文楽の団体はたくさんあるんですか?
全国に約120、愛媛県には松山市、肱川町、三瓶町(現:西予市)、広見町、そして明浜町(現:西予市)の5つです。

●すがはら座の特徴は?
特徴としたら、座の活動は女性が中心になってやっておるというのが、他と比べて一番の特徴じゃないかなと。お芝居の女の人形はみんな女性が使いますんで、舞台が華やかになって見えるのよ。

●現在、保存会のメンバーは何名ですか?
座員は22人です。ところで、うちは保存会というようなものは作ってないのよ。いや、保存会という名前はあるんだけども、これまでは町長や助役・教育長という行政担当者までが座員だったから、積極的に後援会組織をやろうという気運はなかったのよ。もうボツボツ作らないけんなという気はあるんだけども。

●篠川さんが「すがはら座」に参加されたきっかけは?
うちのオヤジもやりよったもんじゃから。それに青年団長だったから団員も連れてな。23歳くらいの時かな。

●座長になられてからどれくらい?

んん〜・・・ほいでも20年くらいになるかな・・・。いや、15年くらいか。昭和59年からじゃから。

●年間の公演回数は?
定期公演は2回しかないのよ。他、いろいろ依頼を受けてはやっておりますから、1年に7〜8回になるんじゃないかなと思うんじゃけどな。

●演目はいくつ?
今私のほうでやれるのは12ですな。演目自体は400くらいはあるんですが。

●たくさんの人形がありますねぇ
頭だけでも100あるんだから、衣裳だけ替えればいくらでもやれるんだけどな。ところで、昔の衣裳はビロードとかで重たいんだな。それで今、ほとんど全部を座員の女性が衣裳をやり替えてるんよ。まあ、難しいのは京都の方に生地だけ注文したりするけど、鎧や兜も彼女たちが手作りしてくれてな。

●一番印象に残っている公演は?

やっぱり遠くへ行ってやったのは印象に残っとらいな。北上市の国民文化祭や徳島や淡路でやった時のように、大舞台を踏んだ時やな。ものすごい声援をもらえたんで、気持ちよかったしな。

●2001年2月に行われる公演の演目は決まっていますか?

肱川町の大谷文楽と三瓶町(現:西予市)の朝日文楽とうちの3つで、忠臣蔵の七段目・祇園一力茶屋をかけあいで4人で語り分けしようかと。私は4人やらないけんのよ。これを私の方でやるのは50年振りくらいよ。登場人物が多いんでなかなかやれんのよ。

●今までの反省点などはありますか?

伝承活動をしてやっておるんだという横着な考えがあったわけよな。みんなに見てもらえるような努力をしていかなければならないと思う。今まで高くとまって横着になっていた面があるのを反省して、これはみんなの財産だから、みんなから愛されるような伝統芸能に育てていかなければいけないというのが、私の願いでもあるんだけども。やはり見てもらう努力が足らなかったということ。だから謙虚な気持ちで、みんなに受け入れられるようなものに育てていくということを、究極の目標としてとらえています。

●今でも座長自身が出演するんですか?
はい。人形も使いますし、浄瑠璃も語ります。

●後継者の育成は行っていますか?

昔、中学生を対象にして文楽教室をやったんだけどもな、いけんのよ。高校を出てから町内に残ってくれる子が一人もおらんのじゃ。ほやけど、いっぺんそういうことで教えておるとな、Uターンして帰ってきた人はやってくれるしな。実際に人形に触れさすと興味は持ってくれるんじゃけどな。

●文楽以外の趣味は?
ないなぁ別に、もう。カラオケくらいのものよ。カラオケは好きだから。

●今後の目標
そうだな、一番の問題としては、後継者の養成をどうしていくか。こうした伝統芸能の伝承は一地域の一団体の活動だけでもいかんともしがたいので、行政も応援してくれるようにお願いしていかなければいけないということで考えております。

編集者感想
インタビュー終了後、一体の武者人形を取り出して実演までして頂きました。私は生で動く人形を見るのは初めてだったのですが、まさか人形とは思えない、すでにリアルという領域を超えた手指の動きに、ため息をつかずにはいられませんでした。このすばらしい伝統を少しでも多くの後世に伝えていってもらいたいものです。今度の公演を楽しみにしています。