がんばる人

宇都宮ユキミさん
(西予市/旧:三瓶町)

三瓶町(現:西予市)の伝統芸能「朝日文楽」の継承者の一人。朝日文楽は県指定重要文化財にもなり、ますます注目されています。 ふるさとの大切さと伝統芸能を継承する難しさ、大切さを語っていただきました。


●あの〜宇都宮さんって失礼なんですけど、おいくつなんですか?
いくつに見える?58歳58!
●58?
そうなんですよ。昭和15年生まれ!
●若く見られるんじゃないですか?
いやそうでもない・・・。いやぁ〜おてんばだからね、若く見られるんじゃないですかね〜
●朝日文楽をやられているということですが、文楽以外に趣味とかありますか?
そうですね〜。詩吟とか釣りとかしたりもしますよ。

●釣りはもう、そこから、釣り竿かついでそこで、釣れますもんね!
そこの、散髪屋のおいさんが、餌だけまいてくれるんですよ。
そして、おーいあつまったぞ〜!っていわれたら、海まで行ってこれくらいのゼンゴを釣ってくるんですよ。それで、だいたい1時間くらいで、20匹くらい釣れるんですよ。ほんで、帰ってきて、お刺身にしたり唐揚げにしたり・・・。
もうちょっとそこに行ったところから釣り糸たらして・・。
そうそう、だから、田舎に住んでてよかったなぁ〜なんて言いながらやってるんですよ。
まぁでも、いま楽しいのは文楽かなぁ〜
まぁ町の文化財やからって始めたんやけど・・・。
戦時中は婦人部があって、男の人たちといっしょに文楽をやっていたんだけども、で、その後いろいろあって、婦人部がなくなったんですよ。それで、それからは、男の人たちばっかりでやってたんだけど、やっぱ、髪を結ったり、着物を縫ったりする女の人がほしいねということになって、それがきっかけで、あれは12年ほど前に入ったのが最初だったんですよ。
でもやり始めると、着物や髪は後回しになって、頭持ったり、手を持ったりみたいな、人形を持つことになって、着物を縫ったりするために入ったのにな・・・、なんて言ってたんですよ。そのときは人形する人が少なかったから、仕方なかったんですよ。

●頭ってどのくらいの重さなんですか?
あれは、20kくらいありますよ。頭に着物の重さもかかりますよ。で、頭は右手で持って、左手は頭を動かすでしょ。で、人形の左手は別の人、足も別の人。つまり、人形1体を3人で動かすんですよ。
そこでね、チームワークがとれんと、一人の人間みたいに見えないんですよ。大阪の方の文楽だったら、足10年、頭10年、手10年という風に、頭を持たしてもらうなんてなかなかながやけど、わたしらはすぐやったね〜、なんて笑うがよ。
●3人一組っていうのは、メンバーは決まってるんですか?
いやいや、バラバラながよ。その時によってちがうよ。女性だけのときもあれば、男女混ざるときもあるんよ。だから、若い男の子なんかは、3人で1つの人形を動かすんやから、体くっつけるでしょ〜。そしたら、こうよけてね〜イヤがってね〜。でも、いやがって離れたりしたら、人形の動きがおかしくなるけん、昔のじいちゃんたちが、「こら!もっとくっつかんか!」ってよういわれてたね〜。
●若い人とかもいるのですか?
うーーん。ちょっとやけどな。どんどん若い人にも参加してもらって、こういった物は残していかんといかんわなぁ〜。
それに、教える方の人もだんだん年をとってきて、教えられんようになっていく。だから、ビデオとかで見て研究するしかないがよ。 これは、三瓶の朝日文楽に限ってやないけど、オリジナルのものがだんだん薄れてきてるって感じやなぁ〜。
だから、県に指定されている人間文化財みたいな人ですか?それが朝日文楽で3人指定されていたんだけども、2人亡くなって今一人だけになってしまった。その一人の方も今は入院していて教えることが出来ないんですよ・・・。

●じゃぁ宇都宮さんが指定されてください。
あはははは、いややわ〜。まぁそういう風にだんだんといなくなっていってるがよ。
●残念ですね・・・。
そうながよ。だから、今はビデオで練習・・・。それも、他の地方の文楽とかのビデオとかもみながら・・・。
●そうなると、ますます三瓶町(現:西予市)の朝日文楽のオリジナルが薄れていっていきますね〜。
そうやね〜。でも、男の人で55くらいの人がいて、その人はその文化財の人たちに教えてもらってるから、それを私達に教えてもらって、伝えることはできるけどな・・・。
●朝日文楽をやってて難しいことはありますか?例えば舞台とかでの難しさとか・・・。
うん。やっぱりありますよ・・・人形の踊りとかね。やっぱり実際の踊りが上手な人は人形を躍らすのも上手ですよ。手振り身振りがやっぱり綺麗ですよ。ただ座るのでもぶっきらぼうに座るのでもないし、泣いてても表情は変わらないのに表情が見えるし・・・。
●でも、実際のからだで表情を出すのは簡単ですけど、棒の先で表現するのはなかなかね〜
そうなんですよ。でも男の人で女の人形を動かすのが上手い人がいるんですよ。そういう人は、逆に私達女性に、どういう動きをしたらいいかって聞いてきますよ。やっぱりいかにリアルにはなやかに人形を動かせるか、というところに一番苦労しますね〜
●朝日文楽をしててよかったこととかは何ですか?
そうやね〜、ハワイに行ったことですかね〜
●え?ハワイですか?
ええ〜平成8年に行きました。ハワイの祭りかなんかに、朝日文楽が招待されて・・・。
●どうでしたその時
凄かったですよ。野外ステージで・・・。それに、ハワイって日系の方が沢山いらっしゃるから、日本の伝統芸能をみてとても感動してましたわ。
●宇都宮さんにとって朝日文楽ってなんですか?
もう〜宝物ですよ。財産ですね。
●じゃ最後に三瓶町(現:西予市)の好きなところはどこですか?
人のいい町ですよ。私はねみんなでいつもいうんですよ。外に出て行った人たちが、帰って来たくなる町、よそから来た人たちが住んでみたくなる町になったらいいなぁっていつもいってるんですよ。


●朝日文楽とは・・・・。
 明治初期、朝立浦の井上伊助が、松ノ木の瘤や桐の木で、人形の頭や胴体を作り、衣装を着せて一口浄瑠璃で人形を操ったことが起こりといわれます。  その後、平六座から本格的な頭、衣装、道具を購入し、素封家、地区住民の支援によって次第に整備していきました。  明治43年(1910年)、大阪の道頓堀の朝日座を模して、朝立の埋立て地に芝居小屋「朝日座」が建てられ、その朝日座を中心に活躍したことから、朝日文楽と命名しまた。  以来、戦争などによる盛衰はありましたが、郷土の誇りの朝日文楽を保存伝承するため、昭和39年(1964年)には、三瓶高校に文楽クラブ、昭和52年(1977年)には朝日文楽会館建設、平成4年(1992年)には、こども朝日文楽クラブができるなど町をあげて努力しています。
「旧三瓶町ホームページから引用」

編集者感想
三瓶町(現:西予市)という生まれ育ったふるさとと、その愛するふるさとに伝わる伝統芸能の「朝日文楽」に真剣に取り組んでいるたくましいおっかさんという感じでした。