がんばる人

河野 多寿(たず)さん(八幡浜市(旧:保内町))
カントリードール作家として活動し、保内町(現:八幡浜市)・大洲市などでカントリードール教室を開いている河野さん。そんな河野さんにいろいろと聞いてみました。

photo●河野さんが制作されている「カントリードール」ですが、どういうものなのか説明していただけますか?
私が聞いた限りでは、アメリカ西部開拓時代(1820〜90年代)に母親が服の端切れで子どもに作って与えた抱き人形が発祥だそうです。まぁおもちゃですね。昔は全部手作りで与えていたんですよね。それがルーツになって、いろいろ進化してきて今の形になったんだと思うんですけど。
●カントリードールとの出会いを教えてください。
そうですね。もともと手作りが好きで編み物したりとかパッチワークしたりとか、子どものパジャマ作ったりとかしてたんですけど、6〜7年前に日本で第1次カントリードールブームっていうのが来たんですね。その時に私も雑誌を買ってきて第1号を作ったんですよ。それが最初ですね。
●それでこれは面白いなと。
そうですね。カントリードールっていうのは、色んな手芸の集大成みたいな形なんですよ。パッチワークの技法も取り入れようと思えば取り入れられるし、セーターを着せたいと思えば編み物もできますよね。そういう風に1つのものに色んな要素が入っているというのに惹かれまして。ルールが少ないので自分のオリジナリティを出しやすいんです。
●なるほど。その後ご自身のオリジナル作品を作るように?
第1作目を作った時、人まねというか、お手本を見て作るのは何となく嫌だなというのがあって、2作目からは自分で型紙を起こして全部オリジナルで作ったんですね。それからは参考書的に雑誌を見ることはありますけど、見るだけで全部独学ですね。誰かに教わるということもなかったですし。なんか人に教わるとその人のカラーが残るような気がしてダメだったんですよ。
photo●いきなり2作目から?上手くいきましたか?
いや、最初の作品はとてもお見せできるようなものじゃないですよ(笑)やっぱり。数を作ればだんだんと分かってくるんですが。小さなものなのでバランスが凄く難しいんですね。5mm違うだけで随分印象が違うものが出来上がってしまうんですよ。
●その他に難しい点は?
そうですね。全体のバランスと、あとは顔ですね。お人形は顔が命(笑)表情というか、顔の可愛さとか。精神状態の悪い時には顔は描きませんね。顔っていうのはすごく描く人の内面が出るものなんですね。だから私の家には顔が描いてない人形がいっぱいあるんですよ(笑)かといって、全部同じ顔に仕上がる訳じゃないんですよ。1体1体顔が微妙に違うんですね。それぞれの個性というか。
今私は和装の人形に力を入れているんですけど、これは顔も刺繍なんですね。だからこれに関しては完全に1点ものですね。同じ型紙から起こして同じように作っているはずなんですけど、背の高さや顔の表情、腕や足の長さまで違いますね。
photo●和装のカントリードールとはどういうものなんでしょう。
作り始めて今年で2年目の自立式(一人で立つ)のカントリードールなんですけど、着物から小物まで全部手作りで作っています。振り袖も人間の着物の生地ではなくて、人形にあったサイズの模様のものを使っています。和室でも洋室でも合う、年齢層を選ばない人形だと思います。お値段もお手頃ですしね。これは私が試行錯誤して作った全くのオリジナルです。全く新しい分野の人形というか。本当に1体1体全く違うので、作るのに手間も時間も掛かりますね。1年目は2体しかできなくて、今年は慣れてきましたけどそれでも8体しかできてません(笑)これは本当に私しか作っていないので、私が進化させていく日本版カントリードールだと思っています。
photo●作品を作る上でのコンセプトやこだわりのようなものはありますか?
私の作る人形は出来れば大人の方に買って頂きたいんですね。お洋服でも普段着とフォーマルってあるでしょう?私が作りたいのはその中間、「ちょっとよそ行き」の人形なんですよ。子どもさんが抱いて遊ぶものじゃなくて、リビングなんかに何気なく置いてあって、なおかつ存在感のある人形っていう。 創作人形ってすごく高価なものは高価なんですよ。私はあんまり高価なものは作りたくなかったし、かといって買ったことすら忘れてしまわれるような人形を作るのは嫌だったんですね。だからその部分にはこだわって作ってますね。さっきの和装のカントリードールもちょうどこの部分にあたると思うんですよね。また、普段は見えない人形の内部も、見えない所こそ気をつかって、綿詰めなどのバランスの調整をしています。あとはオリジナリティにはこだわってます。この先もずっとその点にはこだわっていくと思いますね。
●カントリードール作りで苦労する点はありますか?
う〜ん、作ってて「産みの苦しみ」っていうのはありますけど、私の場合「生まれてこない苦しみ」っていうのがあって(笑)アイデアさえも湧いてこないっていう(笑)自由度が高い分、考えないといけない部分が多いんですよね。やっぱり1体の人形を仕上げるのに頭の先から足の先まで気が抜けませんからね。
●それだけ気を入れて作っているだけに、イメージ通り出来なかった時はがっかりしますよね。
がっかりというか、人形に申し訳ないですよね。私の力が足りないばっかりにっていう・・・。
●先ほどから「その子」という感じで呼ばれていますが、やっぱり人形はご自身の子どものような感じですか?
子どもというよりも私自身の生き方だとか、価値観だとかをそのまま黙って表現してくれるものだと思いますね。人形を見てもらえれば私自身のことが少しは理解してもらえるようなものなんじゃないかと思いますね。いわば「物言わぬ自分」という感じです。
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●ご自身の作品は個展で売られるんですか?
そうですね。4年前から個展をさせて頂いているんですけど、最初はここ(宇和町(現:西予市)・トンカラリー)のオーナーから声を掛けて頂いて、それじゃあ是非という感じで。年に1回、1年間作りためたもので個展を開かせて貰って、そこで手放すという形ですね。「お嫁にいく」って言ってるんですけど(笑)お店に置いて売っていると、どんな方が買われたか分からないじゃないですか。その点個展販売だったら直接お会いするから安心ですよね。だから個展販売にはこだわっています。
●カントリードールにもいろいろタイプがありますが、河野さんが一番好きなタイプのカントリードールは何ですか?
一番力を入れてるのは和装のカントリードール。一番好きなのはレースを使った可愛らしい(笑)カントリードールですね。
●カントリードール教室の講師をされているそうですが。
そうですね。保内町(現:八幡浜市)と大洲市で教室を開いてます。一回2時間で、みんなで一緒に楽しく作りましょみたいな(笑)とにかくルールにとらわれずにその人に合ったやり方で、楽しい教室を目指しています。
photo●生徒さんというのはどういう方が来られるんですか?
わりと遠方の方から・・・宇和島市とか三間町から来られてる方もおられるんですよ。結構遠いですよね(笑)ありがたいことです。
●だいたい何名くらいの教室なんでしょう?
20人くらいの教室ですね。5年前から講師はさせていただいているんですが、その時からずっと来て頂いている方とかもいて。だんだん増えてきた感じですね。最初の方は一人しかいない時もありましたよ。やっぱり(笑)
●河野さんの作品は雑誌なんかにも掲載されてますよね。
そうですね。カントリードール専門誌とか手芸の専門誌に作品と型紙を掲載して頂いています。締切なんかがあるので主婦業との両立が結構大変ですけど、楽しんでやらせていただいています。
●河野さんの座右の銘は何ですか?
「敵は己の中にある」ですね。何事に対しても、芽が出ない苦しい時こそ、耐えて常に気負いせずに前進していくことが大切だと思います。私もいつも自分に言いきかせています。
●これからの夢とか目標というと?

そうですね。私が死んだとしても作品は残りますよね。それが何世代にも渡って大事にされるような作品を作りたいですね。まだまだこれからですね。おばあちゃんになっても作っていたいですね。
●これを見ている方ににメッセージはありますか?
今はお金を出せばなんでも買える、雑巾さえも買えてしまう時代なんですね。そんな時代だからこそ、ものを作る喜びを知ってもらいたいんですね。何物にも代えがたい手作りのものの良さをみなさんにもう一度見直して欲しいと思いますね。
あとこの場をお借りして是非言いたいんですが、家族だとか友人知人、教室の生徒さんがいなかったら私一人の力では絶対ここまでできなかったと思うんです。その方々に心から「ありがとう」と言いたいですね。
photo●最後に、河野さんにとってカントリードールとは?
カントリードールとは・・・。天職・・・だって言いたいですね。これからどんどんいいものを作っていって、カントリードールを作ることが天職だって胸を張って言えるようにしたいですね。
●なるほど。今日はありがとうございました。
ありがとうございました。


河野さんのカントリードール教室の作品展示即売会が行われます。河野さんの作品の他、生徒さんの作品も出品される予定です。
■日  時  2004年5月29日(土)30日(日)
■会  場  北海道の家(愛媛県大洲市東大洲783-2)


■日  時  2004年11月
■会  場  うつわ&ぎゃらりー「トンカラリー」(愛媛県西予市宇和町瀬戸190)

■ホームページ
CRAFTERS KOUNO
http://craftersxxxkouno.hp.infoseek.co.jp/index.html

編集者感想
子どもさんが小学生に上がるのを待ってカントリードール作りに取り組み始めたという河野さん。「何かを犠牲にしないとできないことっていうのは、いつかどこかで歪みが出てくるものなんですよ」という言葉からも、現在の活動の充実ぶりが伺えます。 これからも妥協することなく頑張ってください。