がんばる人

ケース オーウェンスさん(西予市/旧:宇和町)
”たんぼプロジェクト”の仕掛け人であり、芸術家でもあるオランダ人オーウェンスさん。そんなオーウェンスさんにいろいろと聞いてみました。

〒797-0034
 愛媛県西予市宇和町伊延東1040番地

●まず、オーウェンスさんはオランダのご出身だそうですが、何故日本に来られたのでしょうか?
私がオランダの王立大学で造園の勉強をし、世界各国の庭園に触れる中で、日本の「枯山水」の庭を見て強い感銘を受けました。とても素晴らしい空間で、どうやってそれが出来ているのかが学びたくて日本に来ました。
23歳の時に初めて日本に来て、まず大阪を見学し、次に毎日京都の庭を見に行って写真を撮ったりして勉強していました。その後全国を回っている時に、宇和島市で出会った造園会社の社長に、冗談交じりに「うちの会社で働くか?」と言ってもらったんです。だからオランダに帰って、半年間働いてお金貯めてその社長さんに会いに行き、それから3年間そこで働かせてもらいました。
●なるほど。ではここ、宇和町(現:西予市)で活動されるようになったのはどういったいきさつですか?
もともと私は、オランダで造園の会社を作る勉強のために日本を訪れたんです。しかし、ただ造園の勉強だけをしても意味がないと考えた私は、「自分だけの新しい空間」を創るために石の彫刻を勉強しました。その後オランダに帰って作った会社を7年間経営していました。その後南フランスやインドネシアで何年間か仕事をして7年前に再度日本を訪れ、いろいろな場所で住むところを探しているうちに宇和町(現:西予市)に辿り着きました。
●現在はここを拠点に活動されていますが、実際にはどういった活動をされているんですか?
石の彫刻をつくり、また彫刻のための空間創りとそのトータルプロデュースをしています。作品を生かすためにはそのための空間創りが大切ですから、特にその点にはこだわっています。
●作品に使う石はどうやって選んでいるんですか?
人によっては外国などから高級な石を取り寄せてつくる人もいますが、私の場合は出来るだけその土地のものを使いたいので、自分で直接足を運んで選びます。そうでないと、全体のバランスが崩れてしまいますから。
そうして選んだ石を前にして道具を持つと、どうすればいいのかは石が教えてくれます。石と私がお互いにバランスを取りながら作品を完成させていくんです。
●それぞれの石の形そのものを利用して作品を創るということですか。
そうです。石というのは、何千年、何万年もかけて形を変えてきたものですから、それを壊してしまうのはもったいない。その石の自然な部分を生かしながら作品にしていきたいんです。極端な話、自然の石そのものが作品になることだってあるんです。
●どうしてオーウェンスさんが手がけるのは「石」なんでしょう?
石というのは堅くて粘っこく、非常に扱いにくい物です。しかし、それを乗り越えて作品を完成させると、私が死んだ後もずっと残すことができるのです。また、石は人間と非常に密接な関係にあります。どこの国でもお墓というのは石で出来ている物ですし、大きな文明では石を大切にしています。あとは、石は自然の一部でもありますし、生命を感じる点も魅力です。
●オーウェンスさんの作品にはあまりタイトルを付けないというのを聞いたのですが。
タイトルがあると、見る人は先入観を持って作品を見ることになります。人それぞれに抱く思いは違うはずなのに、タイトルがそれを限定してしまう。タイトルというのは、その作品を束縛するものでしかないのです。
●なるほど。今仕事をされているのは日本国内だけですか?
日本も全国各地から注文が入りますし、オランダで7年間会社を経営していたこともあってオランダからも、またフランスやインドネシアからの注文もあります。注文が入るたびに現地まで出向き、その場所を確認してイメージを膨らませてから作業に入ります。そのためにインドネシアには私のアトリエもあります。
●やっぱり実際に足を運んでみないと分からないということですね。その他にはどのような活動をされていますか?
高校で美術の講師をやったり、イベント企画、個展を開催したりもしています。
●イベントというとどんなものですか?
今計画しているのは「田んBOXプロジェクト」といって、2000年に企画した「たんぼプロジェクト」(宇和町で開かれた、たんぼの中に1年間に渡ってオーウェンスさんの彫刻を展示、それを生かした多彩なイベントを展開したプロジェクト)に続くものです。「たんぼプロジェクト」の時は私の作品を展示しただけでしたが、今度はたんぼの中に3.6×3.6mのボックス(箱)を20個展示する予定です。それぞれのボックスは、他のアーティストの方にお願いして素材・テーマなど自由に創作してもらいます。外から見ればどれも同じような正方形の箱ですが、中にはそれぞれのアーティストの世界が広がっているというものです。
●プロジェクトに参加するアーティストの方はどんな方ですか?
やはり田舎のイベントにはしたくありませんから、世界中からアーティストを呼ぶ予定です。今予定しているのは、オランダ人3人、メキシコ人2人とドイツ人1人、それと日本人です。
●面白そうですね。ちなみにそのイベントはいつから始まるんですか?
2004年の1月から「えひめ町並博2004」にあわせて始まります。
●なるほど。ではなぜオーウェンスさんは、彫刻や庭をつくって「空間」を創ろうとされるのでしょう。
私は自然や、それに関わる居心地のいい「ゆとりの空間」を創るのが好きなんです。こどもの頃から外で遊ぶのが大好きで、ずっと自然の中で暮らしてきました。才能があるかどうか自分では分かりませんが、私にはこの道しかないと思っています。作品を創っている時が本当に生きがいを感じる、楽しい瞬間なんです。
●日本でお好きなものというと何になりますか?
生花、お茶、それに枯山水の庭です。日本には「指先の世界」という素晴らしい世界があります。私はその世界の中に入っていきたいんです。
●「指先の世界」とはどういう世界ですか?
世界のどこにもない、細かく微妙な日本独特の世界です。日本人の繊細な感覚とデザインというのは、唯一のものだと思います。
●では、お仕事以外はどんなことをなさっていますか?
1年に2回はリフレッシュと経験のために大きな旅行をします。世界中の様々な場所を旅して様々なものを見たり、様々なものを食べたりすることが、作品に影響を与えてくれます。そうして世界中を旅しているからこそ、この場所で落ち着いて仕事ができるのです。
●オランダ人のオーウェンスさんから見た日本人の印象は?
日本人は心配しすぎたり、考えすぎたりする傾向があるようです。悪い結果ばかり考えずに、とりあえずチャレンジしてみることが大事だと思います。
●これから先、何か目標はありますでしょうか。
生まれてから最初の20年間オランダで生活して、その後の20年間日本で生活してきました。ですから次の20年間はまた新しい場所、アメリカのニューヨークで活動したいです。やはり世界の中心ですから、その場所でチャレンジして「世界のオーウェンス」と呼ばれるようになりたいです。そういう高い目標を設定して、それを実現するために死にものぐるいで努力をしなければ意味がありませんから。
●最後にこのページを見ている人にメッセージをお願いします。
夢・希望を持って、自分の個性と持っている可能性を引っ張り出して頑張ってください。夢が実現するかどうかよりも、夢を持つことが大事なんです。その夢に向かって、自分に厳しく死にものぐるいで頑張る。人間は素晴らしい生き物なんだから、その可能性を生かしていかないともったいないですよ。色んなところに行って、色んな経験をして、その経験の中から自分の可能性を見つけてください。
●今日はありがとうございました。
ありがとうございました。


編集者感想
「そんなに甘くないよ」笑いながらですが、何度もこの言葉を繰り返していたのが印象的でした。厳しい状況を乗り越え、芸術に命をかけて取り組んできたからこそ今のオーウェンスさんがあるのでしょう。「オーウェンス」さんが「世界のオーウェンス」になる日も、そう遠い日のことではないのかもしれません。