「泉谷地区棚田を守る会」会長 上岡 満榮さん(内子町)

──今回は内子町の「泉谷地区棚田を守る会」会長の上岡さんです。日本の棚田百選に選ばれた「御祓(みそぎ)の泉谷棚田」でお話を伺います。

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──上岡さんはいつから農業を?

私は子供の時からずーっと、小学校5年生ぐらいからやりよる。その頃は牛を使っての耕運よな。もう60年じゃなぁ。

──60年!すごいですね。上岡さんは「棚田を守る会」の会長とお聞きしたのですが、何人くらいメンバーがいるのですか?

30人くらい。泉谷地区を出た人に入ってもろうたり、私の娘がおったり。

──どんなことをする会なんですか?

百選になった時点で棚田を守っていかないといけないということで作った。活動は、今は自治会と一緒にPRイベントをやったり、棚田の農作業体験ツアーを手伝ったり。植栽しているシャクナゲの管理をしたり。小学生が毎年体験学習で田植えをするのでその受け入れ。子どもらは楽しいがな。

──イベントはどんなことを?

イベントはしゃくなげ祭りです。シャクナゲは10数年かけて植えて1200本ぐらいある。自然浴ツアーがしゃくなげ祭りになって同時開催していて、また地元の催しとして豊年踊りもあります。

──「豊年踊り」とは?

これは長浜の豊年踊りを教えてもらって。長浜の人にお断りをしたら、あちらも後継者がおらんのでどうぞやってくれということで、分からんとこ教えてもろて。長浜のとまったく同じにはやれんのですが。田んぼの作業を本物の田んぼを使って演じてやるんですよ。

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──他はどんなイベントがありますか?

棚田オーナー制度の農業体験の中で「かかしづくりコンテスト」をやって、去年は地元としては、4メートルほどの坂本龍馬をこしらえて立てたな。

──じゃあ秋になったらかかしがいっぱいですか?

秋までいかんで、7月に入ったらかかしをつくってな。15、6体くらいかな?そうとう賑わうんですよ。

──オーナー制度についてお聞きしたいんですけど、いつ頃から始められたんですか?

12年くらい前から。最初は4、5人やったんかな。それから徐々に増えて。オーナーは田植えや草刈りやら一年中、収穫まで一通りやってもらう。一区画オーナーさんに貸してあげるわけ。そこでお米を作ってもろうて、できたお米は30キロはとって帰ってもらう。

──毎日オーナーさんが来て作業をするんですか?

私らが管理してあげて、年に4回ほど来てもらうんで、お祭り騒ぎみたいなもんじゃね。田植え、かかしの時に草刈り、稲刈り、お米にする脱穀の4回。稲刈りの時には稲木に干す。稲刈って、すぐに稲木にかけて、2週間ほど自然に乾かして、脱穀するわけよ。

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──一組当たりどのくらいの面積になるんですか?

そうじゃな。二畝(ふたせ)くらいはあろうか。2アールか。30キロに足らん分はほかの田から分けるから、ほとんど儲けにはならん。けど、人との交流があるのでやるわけよ。

──毎年同じ方がオーナーさんになってるんですか?

リピーターでずっとやってる方も。松山から東京へ引越しした方も忘れられんといって代わりの人をまわしてもろうて。つなぎがあったらまたこっちに遊びに来た時に来れるのでやりよんじゃろうな。

──全部でどのくらい田んぼがあるんですか?

水車の下から95枚あるんじゃが、今はほとんど私がしよる。一町くらい、まぁ棚田の一町じゃけんな。標高あるし、急斜面じゃし、田んぼは小さいしな。

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──さっき聞いたんですが、上岡さんは一番の若手だと。

若手よ、70の青年(笑)。まぁでもこれだけの田んぼをやるゆうたら、人の二人分はやらんと終わらんのよ。この時期は朝の5時から夜の7時までは毎年ぶっ通しで一か月では終わらんのよ。そんで体使うのよなぁ。これから何年続こうか、それが一番の悩みよ。下の方からな、腹でも減って夜7時ぐらいになると歩いて上がれない。
去年な、下へ降りて農作業しよって、さあ帰ろう思って上がりよったら途中で帰れんようになったのよ。動けんのよ、もう弱ってしもうて。で、きょろきょろしよったらな、カラスがみかんをくわえて捨てとった。で、ええもんがあるわって、それを拾って食べて元気になって歩けるようになって帰れたのよ。カラスに助けてもろうた。それぐらい一生懸命やらなんだら棚田は守っていけんよ。

──大変ですよね、ずっと維持していくのは。

大変。高齢化になっておるしな。
棚田で一番大変なことは、これだけの田んぼがあって斜面もあるので、大雨が降りだしたら一番いけんのよな。大雨が降りだしたら夜中でも起きて水路へ水を逃がしてやる。上から畔越ししてあふれてくると田んぼが崩れてなくなる。水路へ逃がす作業をしないと守っていけんのよ。

──でも夜中に雨が降ったら真っ暗で危ないじゃないですか。

それでも行かないけん。でも危ないけん一人では行かないのよ、嫁さん連れていくんじゃが。下へ降りていけるように田んぼが見渡せるライトを町につけてもろうた。

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──本当に、お体には気をつけてくださいね。棚田で、一番好きなところや見どころは?

季節は今の水入れたときと、秋の実った時がええわな。今(田植え後)は夕日が見えると田んぼが真っ赤に焼けてくるので、それがええ。稲刈るごろになったら、黄金に熟れた稲を見るのがきれいです。冬場は雪が積もります。それもきれいな。今年は大雪で50センチ位積もって、日が当たらんから雪が解けん。もうそのまま冬眠じゃ(笑)

──冬の間はどんな作業をされているんですか?

冬は林業をやりよるな。山仕事は金にはならんけどな。除伐とか。

──わら細工を作っていると聞きましたが?

それは姉です。なんでもやりよる、俵とか篭網とか、じっとしとくのが嫌いなほうで。嫁さんが習たらええが、言うけどそんなヒマないんでの、米作りだけでは金にならんけんな。

──難しいですか。

最近はこの近くの畑でキュウリをつくりよる。それが収入源。しいたけも始めて今年はそこそこの値がついた。林業がいかんのよな、でも手を入れていかんと山が荒れていくし。

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上岡さんご夫妻

──田んぼは代々受け継がれているのですか?

江戸時代の墓があるから、そのくらいから集落はあるんじゃろうな。昔は300枚ほどあったけど、減反で杉になって。

──残していきたいですよね。みなさんが協力されてるのですよね。

いままで守ってきたものを1年荒らしたらおしまいじゃけんな。人も来なくなるし。アイデアも行政から出してもらってもっと頑張って。手間かけて1年でも長く残ってくれたら。

──今秋から作業に来てくれたオーナーさんが泊まったりできる農家民宿を始める予定だそうです。多くの人に来てほしいですね。今日はどうもありがとうございました。

上岡 満榮さん(内子町)

「泉谷地区棚田を守る会」会長

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