安部田 富雄さん 織田 端さん(西予市)

──今回は西予市で活動されている「グループムサシ」の会長、安部田さんと事務局の織田さんにお話を伺います。以下安部田さん(黒)、織田さん(茶)で表示します。

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安部田(あべた)さん

──今日は宜しくお願いします。

安部田:私は登山が専門で、普段は登山ばかりやっています。昔から9割がた単独で登ります。ですから話すのは苦手で。事務局の織田さんは元教師ですし、慣れておられます。

織田:いえいえ、剣道が専門でしゃべるのはあんまり。高校の体育の教師をやっとりました。

──織田さんのご自宅にお邪魔しているのですが、いろんな賞状や盾がたくさん並んであります。

シニアの大会で全国2位だったんですよね?

いえいえまぐれです。日本武道館であった全日本高齢者武道大会で準優勝。西予市のきらり大賞も市長からいただきました。

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織田(おだ)さん

──素晴らしい!失礼ですがおいくつなんでしょうか?

まもなく69歳です。(織田)

私は65。高齢者の仲間入りです。(安部田)

──え!現役で剣道されたり山に登ったりすごいですね。

安部田さんは山といってもヒマラヤに登ってますし、この辺のクライマーとは格が違います。

──お二人の出会いは?

私が皆田(かいだ)の区長、安部田さんが下川(ひとうがわ)の区長で、地域のいろんなことをしよったんです。会う機会も多くて。ただ、地区でなにかしようとすると総会じゃ予算じゃと、区長であっても思うようにできんのですよ。そんな時に高森山が東京スカイツリーと同じ高さだからちょっとこれを売り出そうということになって。それじゃあアルピニストの安部田さんが適任。これだけのすごい人がおるのに、地域で活用できてないからもっともっといろんな人と接触させてアピールできたらなぁと思って。

──「グループムサシ」とはどのような活動をされているのですか?

高森山に看板を建てたり、道案内を作ったり、休憩所の草を刈ったり。

──「グループムサシ」は高森山の標高「634m」が由来だとか。

正直いうと、高森山は634.9mあるんです。四捨五入したら635mなんですよね。

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高森山・法華津峠MAP
(PDFが開きます)

小数点以下は切り捨てで。それに法華津峠は「436m」で逆にしたら「634」おもしろいでしょう。
四国西予ジオパーク構想もあり、高森山と法華津峠をジオポイントとしてそこを中心に売り出し、世界へ発信しようと平成24年くらいから活動を始め、そのうちに小学生や地域の子ども達が連れてってくれと。最初はこちらが「山登りはいいですよ」ってお願いしていたんですがね。法華津峠で1時間、高森山で2時間弱、子ども達にとって無理のない、なにかあってもすぐに帰れる距離を登っています。

──会員はどのくらいいらっしゃるのでしょう。

機動隊でぱっと動けるのは10人くらい。あとは賛同してくれる壮年クラブや老人クラブの人たちも手伝ってくれます。ボランティアですから。幅広く知られてはいるけれど年間計画や予算は全くないので「言われたらやる、気付いたらやる」という機動力のあるグループです。

──活動は年にどのくらい行っていますか?

特に決めてはないですね。登山道の上に枯れた松の木が倒れ込んでたらのけるとか草刈りをするとか。

草刈りが2〜3回、山道も馬鹿にできませんので迷わないように標識を建てて。あとは保育園や小学生を連れて数回。スカイツリーと同じ高さということもあって、メディアにも取り上げられていろんなところから人が来るのでそのボランティアガイドもします。

──高森山は東京スカイツリーと同じ高さからの眺めですしね。

私らは西予ジオパークのジオポイントで一番感動できるのは天下の絶景の法華津峠と東京スカイツリーの高さを体験できる高森山だと思うんですけど。

私も沖縄県以外の山に脚を踏み入れてきましたが、この景色は他所にひけはとらないと思っています。

──私も以前(車で)登ったんですが確かに、素晴らしい眺めでした。

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真ん中が高森山
この辺から歩いて登りますよ

最初子ども達をつれて行った時はしんどいしんどい言うて、そんなに続く行事じゃないかなと思ってたら、今は近所の別の保育園の子ども達も一緒に行くようになりましたね。我々は子どもを鍛えようという気持ちがあるんですよ。ケガでもさせたら大変ですから学校でもあんまり怖いことはしませんしね。でも我々は山では木登りさせたり、木にロープ結んでのぼれーってやったり。そしたら子ども達はみんな並んで待ちよるんですよ。

そう、でも親はロープを出すと眉をしかめるんですよ。あぶないことやらすんやないかなって。

他にも、この道もうちょっと整備できませんかって言われるけど「山道はこんなもんです。石ころだらけで落ち葉も落ちとるし、溝も掘れとる。」って言います。そして子どもだけでなく、安部田さんに会ってみんなビックリして帰るんですよ。普通にそこらへんの山登りよるおっちゃんとは違うって。山登りを好きになってくれる子どもが増えると嬉しい。しんどい思いをしたからこそ、頂上で見る景色や達成感を味合わせたいですね。

──高森山・法華津峠くらいだったら装備もそんなに必要ないでしょうか。

そうですけど安部田さんに言わせると、どんな山でも甘く見るなと。

人を連れて行くというのはそういうことです。ねんざ、骨折、動けなくなった、熱が出た、そういうことも想定しとかんといけん。そしたらテントも寝袋もロープも必要。だからそこらへんのちょっとした山に上がるのにもいつも「何が入っとん?」という20kgほどの荷物になります。なぜ20〜25kgの重さにするかと言うと、もう一つねらいがあるんです。人間、楽なことにはすぐ慣れるんで、私は軽い荷物に慣れるのが怖いんですよ。それに慣れてしまったら高い山へいけなくなるので水も2Lをふたつくらい余分に持って行ってます。訓練も兼ねて。また必ず誰か水が無くなることがありますので、山で水がなくなったら大変なので予備を兼ねて持って行っています。

──連れて行ってもらえる方は安心ですね。いつでもお願いしたらガイドをしてくれるのですか?

自分の予定が空いている時だったらいつでも行けます。

最近は登山グループがいっぱいありますのでガイドがなくても登っていますよ。あとは公民館、どんぶり館(道の駅)、市役所などから連絡がきますので、私たちの体が空いていたらいつでも案内できます。車で来られたら、公民館の駐車場に置けるようにしてあります。電車で来られたら「JR下宇和駅」で降りてもらって、歩いていけます。

──許可や事前の連絡がなくても大丈夫?

大丈夫ですが、ボランティアガイドがいる場合は事前に連絡ください。

高森山にはあずまやはありますが、トイレが法華津峠にしかないので気をつけていただきたい。

地域の壮年クラブたちと草刈りや木を切ってもう少し見晴らしをよくしたいです。土地の方には許可をもらってるんですけど。そうしたら吉田の盆地も海のほうもとても綺麗に見れるんですけどね。

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高森山山頂から

──海岸線はきれいですもんね。

海外から来られた方はビックリするみたいですね。あのリアス式海岸や島を見て。

季節や時間によって全然違いますね。時期がよければ夕日が海にきれいに沈んで、海がオレンジに輝いて。法華津峠からの景色も綺麗ですしね。

私がまだ小さい頃は法華津峠を通って宇和島に行ってました。

宇和島や吉田に行くには必ず通るところで、乗合バスも通ってましたね。国道56号のトンネルができたのは私が高校のころだったかな。法華津峠には売店もありました。

一大観光地でしたよ。バンガローもあって若者が夏にキャンプをしたり、子どもの頃の遠足は法華津峠。周りが山ばかりで海の雄大な景色を見ると感動するんです。法華津峠は昔の大街道です。車の無い時代でも馬車で宇和の米を海岸へ、魚を宇和へと往来が。今も卯之町から伊達の殿様が参勤交代で通った路が残ってるんですよ。

──今度は法華津峠に行ってみたいです。
──話は変わりますが安部田さんが山に登り始めるきっかけはいつ頃から?

小学生くらいからこの辺の山に登っています。宇和は四方が山。その山に登ったら海が見える。山の上から海を眺めるのが好きだったんですね。
山から海に夕日が沈むのをきれいやなぁって眺めて、それで帰るとこちらは真っ暗。ふくろうがホーホー鳴いて怖くて山道を走って、脚をキズだらけにして帰っていました。
本格的に登山を始めようと思ったのは高校に入るときですかね。山に登るには何の部活をやればいいんだろうと考え、体操部に入りました。

──体操部?

例えば転落したとしても空中で自分の体をコントロールできたら、頭から落ちると死ぬような高さでも、脚から落ちたら骨折程度で済むんじゃないかな、と考えた訳です。実際に4回骨折しましたがまだ生きています。あとは登山に必要な懸垂力や柔軟、腹筋、背筋を鍛えるのは体操部が一番いいかなと。

もう、猿ですよ。一緒に高森山に上がって、あら見かけんなと思ったら木に登っていて。すごい筋力ですよ。

──どの季節に登るのですか?

高森山に子ども達をつれて登るのは春から秋のあいだですね。私は他に「FuYu(ふゆう)山岳会」やトレッキングクラブを率いているんで、そういう団体を連れて行くのは雪が積もった冬でも登ります。

──トレーニングも兼ねて?

それもありますが、雪の上を歩く楽しさを教えてあげたいんですよ。雪は滑るでしょう。FuYu山岳会っていうのは会員の提案で名前の富雄の読み方を変えただけなんですが、昨年その会で鳥取の大山(だいせん)に行ったんです。登山口から2mくらいの積雪でしたがみんな雪になれてないのでわーわーきゃーきゃー言いながらほんとに楽しく登ってきました。大山はしっかり雪が積もりますが、比較的安全なので引率するにはいい山なんです。

──年にどのくらい山に登るんですか?

地元の山も入れたら年に30回くらいかなぁ。退職してからは。

──今までのお仕事は何をされてたんですか?

郵便局員をしていました。ヒマラヤへ行きたくて行きたくて、53歳で早期退職しました。

──え?退職した後ヒマラヤへってことはトレーニングも退職後?

いえ。登山をするために駅伝を走り、バレーボールをし、ソフトボール、卓球、テニス、クライミング、ウォーキングと、いろいろ鍛えてきましたし、在職中でも山に行っていました。みんなは有給が残るんですけど、私は毎年目一杯使って山へ行っていたので出世も一切せず、おかげで寿命が縮むような思いもなく退職できました。だから今も非常に健康で、針でついたほども体に悪い所はありません。

──今でも日々トレーニングをされているのですか?

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駅伝は60歳以降、スピードも出なくなりやめましたが、バレーは週4回、クライミングは月2回、ウォーキングは年に何回か4〜50km、懸垂、腹筋、背筋は日々やっています。

──グループムサシをやりつつ、山岳会もあり、クライミング教室の講師と、毎日お忙しいですね。

農業もすごいんですよ。スイカ作りの名人です。

──常に体を動かしているんですね。

よく食べる割には太りませんね。冬山行く前はもっと皮下脂肪を付けないと、一日に5食くらい食べます。でもいっぺん山に行ったら元に戻ってしまいますね。

──蓄えていかないと、寒いからですか?

寒いのと、もし食料が無くなったら皮下脂肪が無いのは貯金が無いのと同じですから、すぐアウトです。秋頃からたくさん食べますね。先ほど健康だという話をしたんですが、中性脂肪だけは正常値の範囲内ですが低いですね。これ以上低くしたらいけませんねと医者に言われます。

──健康だから登山を続けていけるんですね。織田さんも剣道では現役ですし。

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剣道はこの年でも高校生と対戦できるし、武道館であった全国大会の最高齢は92歳だったから、私なんかまだまだ若輩者です。

筋肉はいくつになっても鍛えられるんですよ。

年とともに体は弱っていくんですけど、気持ち次第でいくらでも鍛えられる。怖いのは気持ちですよね。気持ちが萎えたら弱っていく。70なっても80なっても体にむち打って頑張りたい。家族には心配されるんだけども、私ら二人とものんびり過ごすのは無理や。

この年齢になって辞めたら二度とできんなる。体が許す限り絶対続けるいつまででも。左足だけでも6回手術していますが、1年間で6ヶ月間登山したり済美高校の校歌じゃないけどやればできるもんですよ。

同じ65歳の人と比べてみても全然違いますよ。

少しでも目標を持ってやってないと。私は5月に倒れました。剣道の練習も絶好調だったんですが帰ってきて倒れました。脳血栓です。でも後遺症も残らず、元気で剣道やってます。

普通はどこかに支障が出るんですが鍛えとるけん元どおりに治るんでしょう。

安部田さんだってこの冬に槍ヶ岳で凍傷になりましたよね。気をつけないけませんねってみんなに言われるけど聞きませんね。

この時は僕の人生65歳で終わった、って思いましたから。47年登山やっていて11月にあれだけ雪に降られたのは初めてです。一晩で1m以上積もって、テントが雪で押しつぶされて身動きができなくなって、脚が抜けん。腕がうごかん。そのうち息が苦しくなって窒息するぞと思ってテントを引きちぎろうと思ってもなかなか破れん、普段だったら破れたかもしれんのですが、身動きがほとんどとれん状態なんで力が入らん。女房になんとかメッセージを残そうと思いよったんやけど。

──どうやって出られたんですか?

意識を失う寸前に最終的には本能になったんじゃろうな、歯で噛み破ってました。ちょっと切れたらあとはピーッと破れるんで、それで這い出したのが夜中の2時頃でした。テントは破ったし一難去ってまた一難、朝を迎えれるんやろか。気温はマイナス18度、風速10mくらいの猛吹雪、これは朝までに凍死してしまうな、寝袋に入ってても隙間から雪が入ってくるし。けどマイナス18度程度で凍死なんかしたら全国の山仲間に笑われると思ってなんとかかんとか。

いつもトレーニングしてるから助かったんであって、なんの経験も無くあのような目にあったらおそらくダメでしょう。

今までにもうダメかなと思うような経験を20回くらいしてますので。まあ、それでも山に登るのにはその先の景色が綺麗ですから。今ちょうど年賀状を書いてるので、こんなのを。こういう景色は登らんと見えんので。北アルプスの山頂です。

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槍ヶ岳山頂からの景色

──うわーすごく綺麗な景色!

この写真の前に死にかけて、手がじんじんして痛いけど下へ降りて温泉に浸かったら治るであろうと思って山に上がりました。で、松本まで帰って風呂に入っててもあれ?治らんな、凍傷になったなと。全治3ヶ月って言われましたけど1ヶ月ちょっとで大分治りました。

──すごい回復力ですね。それではまだまだ話が尽きないのですが、最後に一言お願いします。

私よりも高森山や安部田さんの紹介をお願いします。多くの人たちに来てほしいです。

日本アルプス等は5月くらいだと強烈な紫外線を一日に14、5時間もあびて皮膚は汚くなるし、冬は危険がいっぱいだし、あまり勧められませんが、高森山だと春夏秋冬いつても誰でも簡単に登れますので是非おいで下さい。

そんな本当に危険な所に果敢に立ち向かうような人間は滅多にいませんのでね。ほんと、サムライですよ。

──全国レベルのお二人からとても貴重なお話を聞かせていただきまして本当にありがとうございました。「グループムサシ」と一緒に高森山・法華津峠トレッキングをしてみたくなりました。これを読んでいただいたみなさんも、ぜひ高森山へ登って安部田さん・織田さんからいろんなお話を聞いてみてくださいね。

高森山・法華津峠登山のお問い合わせ

下宇和公民館:0894-62-0155

高森山の詳細はこちら

安部田 富雄さん
織田 端さん(西予市)

「グループムサシ」会長、事務局

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