佐々木 智也さん(伊方町)

──こちらは伊方町湊浦にある「妙楽寺(みょうらくじ)」。最初に、作品が並んでいる倉庫を見せていただきました。棚には鉢や皿、コップや急須、中には玉子のようなものまで置いてあります。

──たくさんありますね。どちらかで販売されているのですか?

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妙楽寺

このあたり(伊方)では出してないですけど、東京など都会の方へ出て販売しています。ギャラリーを回っておいてもらったり、イベントに出したり。

──通信販売などは?

してないですね。焼き物は実物を手に取ってみて選んでほしいので。一つひとつ、少しずつ色や形、触り心地が違っているのが分かると思います。

──常にどこかのお店にある、って訳ではないのですね。

機会があったら地元でも活動ができたらいいな、とは思っていますが、愛媛には手作り作家のマルシェやイベントが少ないですよね。でも活動範囲を広げ過ぎて手間が増えるよりは、創作時間があった方がいいので、今はいろいろ考え中です。

──白い器や黒い器、いろいろありますね。

砥部焼を勉強してたので、砥部焼の土もあるんですけど・・・この白い器とか。
黒い器は、白い土に黒い釉薬(ゆうやく)をかけて焼いてあります。

──すべて愛媛の土なんですか?

*

愛知県の瀬戸にある土を購入しています。焼き物の産地なので売ってるところがいっぱいありますから。
砥部焼の土は、車で砥部町まで買いに行きます。大学を卒業してから砥部で7、8年勉強していたので、砥部のことはよくわかります。

──青いのも・・・釉薬ですね。

元は茶色い土に釉薬をかけてあります。
この青いのは、(愛媛県松山市にある)「伊予かすり会館」で「藍染め」に使い終わった灰をもらってきて、釉薬に混ぜて焼いているんですよ。無償で譲っていただけるので、大変助かってます。

──きれいな色ですね。もっとじっくり見ていたいのですが、作業場の方に移動しまして・・・
では、いつ頃から陶芸を始められたのでしょうか。

大学生の時、焼き物サークルに入ったのが始まりです。

愛媛は砥部焼が有名ですから砥部で就職があるのかなと思って探してた時に、県の「陶芸塾」という若手を育てる事業がありまして、それに応募して勉強しました。1年間いろんな砥部焼の先生方に教えていただいて。修了した後も砥部でバイトをしながら数年過ごしました。

──お寺の住職をされているとお聞きしていたのですが・・・?

それは実家がお寺なので、3年前に京都のお寺で1年間修行してきました。

正式には祖父が住職なんですけど、今は主に父が務めています。僕も手伝います。だから住職ではなく僧侶です。

──本業はどちらでしょう?

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陶芸をしている時間の方が長いので、本業は陶芸の方かな。お寺が本業にするほど大きくもなく、檀家のいない「祈祷寺」なんで、親も兼業ですし。

──そうなんですね。
他にお聞きしたいのですが、姉妹都市から来た学生に陶芸を体験してもらったとお聞きしたのですが?

伊方町で月に2回、陶芸教室の講師をやらせていただいています。その関係で、アメリカの姉妹都市の学生が伊方町に来たとき陶芸体験をしたいから、って言われて教えました。十数人いたかな? それが平成23年の夏でしたね。

──どんな体験をなさったんですか?

中・高生くらいの学生で、女の子が多かったです。伊方の中学生も一緒に交流しました。ろくろを回したり、机の上でカタチを作ったり。言葉が通じなくて大変でした。

──そのとき出来上がったものはどうしたのですか?

1週間くらいの滞在だったので、帰国までに仕上げて、持って帰ってもらいました。

──それは喜んでもらえますね。
他に陶芸以外で伊方町で何か活動をされていますか?

太鼓のサークルには入ってるんですけど・・・。

──何太鼓ですか?サークル名とか聞いてもいいですか?

和太鼓です。「伊方堂々太鼓」っていうんですけど、入ってみたらあまりにも自分にリズム感が無いことに気づいて・・・。「これは才能がなさ過ぎる、向いてないのかも」と感じているので、気長にやろうと思っています。

──伊方町での生活はどうですか?

そうですね、祭りや地域の行事には顔を出したりするんですけどほとんどの時間を創作活動に費やしているので引きこもり的な生活ですね。

──引きこもり・・・1日の創作活動時間を教えてください。

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7、8時間~10時間・・・時間があればずっとですね。用事があったら出かけます。毎日が日曜日みたいな感じかなと想像してたんですけど・・・

──いいなぁ、「毎日日曜日」!

初めはそう思ってたんですけど、実はなかなか休めなくて、常に時間に追われてる感じがします。

──締め切りがあるんですか?

今は注文をいただいているのでできるだけ早く納品するように頑張っています。お店やギャラリーから注文された数を作って送らないといけないので。
そういったお店を回る営業だとかは、知人から話を聞いたり、調べたりして全部一人でします。

──まだお若いですよね。資金面では大変じゃないですか?

あの窯とかはいただきものです。10年程前にお寺のお堂を建替えた時に、この倉庫も作ってあったんです。それで自宅で陶芸を始めるにあたって、ごみや荷物がたくさんあったのを全部片付けて、作業場にしました。

──いやぁ、倉庫だったとは思えないですね!山小屋風でおしゃれですよね。

壁は自分で塗ったんですよ。実は全部コンクリート打ちっぱなしだったんです。でも、灰色だったら気分が滅入るじゃないですか。 コンクリの壁、鉄筋の柱は白いペンキを塗って、反対の壁はベニヤをはめこんで白くしました。

──すごい!全部手作りですか?白く塗るだけでこんなに素敵になるんですね。

白いペンキはすごく便利ですね。大洲にあるホームセンターにはすごくお世話になってます。ここの棚も板を好きな長さに切ってもらって手作りしました。この薪ストーブもホームセンターに売ってますし。それにストーブから出た灰も釉薬に使えますよ。

──おぉ、使えるんですか。

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これが先ほどお話しした「伊予かすり会館」でもらってきた灰です。水の中に入れて撹拌して灰汁(アク)を抜いていくんですよ。それを何度も漉していくと細かくなっていくんです。

──うわ、キメが細かいですね!

これに九州の天草で採れる陶石で有田焼の原料や、長石っていう釉薬の原料になる粉を混ぜて使います。土の調合を変えながらテストピースを作って土台や釉薬の色を確認します。

ストーブの灰も釉薬用に漉していけば使えるんですけど、灰汁抜きに時間がかかるので。「伊予かすり会館」のは灰汁抜きしたものをたくさん置いていてくれて、しかも取りにいくと喜んでくれるので、とても重宝します。

──砥部や松山、いろんなところへ出かけられるんですね。

松山の九谷というところに石田誠さんという陶芸家の方がいて、その人のところでも勉強させていただいています。

──お、ということは師匠ですか?

そうですね、今もよく手伝いに行っています。

──同じような焼き物なんですか?

いえ、石田さんとは違いますが、いろいろ修行させてもらっています。

最初は砥部で勉強していたので、帰ってからも砥部焼っポイのも作ってたんですが、もう砥部じゃないので、いろんな土を使ってみようかなって試しているうちに、今の感じになってきました。あまり「和風」にしてしまうと最近の家も雰囲気が変わってきてるし、嗜好も変わってきてるので。自分の好きなシンプルなデザインにしています。

──と、ここで実際に作っていただきました。

みんなに見られると緊張しますね。
これは型に入れる前の元となるものをつくっています。

──この塊で何個くらいできますか?

10個くらいはできるかな。

──陶芸教室ではろくろをまわしたりするんですか?

ろくろはあまり難しい作業ではないですよ。穴をあけて、ふちを挟んで伸ばしていくだけで器の形になりますから。

陶芸教室でも練るところからや、ろくろをまわしたりとかしますね。
ろくろはできるようになるまで時間がかかるので、それで挫折してしまったりするんですが、単純な作業だと思います。自転車の練習みたいなもので、初めはなかなか乗れないけど、コツをつかめば簡単に乗れるようになる。だから、慣れたらできますよ。

──なるほど。はやいし綺麗ですね。

この後、型にはめていきます。このテーブルに並べているのが、型にはめて成型したものです。花のデザインの器は、人気があって結構注文がきてるんですよ。

──ありがとうございました。
最後にこの「妙楽寺」にある、伊方町指定有形文化財になっている「五輪塔」を見せていただきました。

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五輪塔(伊方町指定有形文化財)

開祖のお墓と聞いています。

──大きいですね。そして、伊方町の中心地が見渡せて見晴らしも素敵です。

そうですね・・・僕にとっては小さい頃からここにあるのが普通なので、なんと言っていいか。

──一人でこもっていると気が滅入ったりしません?解消法とかはありますか?

特に陶芸で上手く行かなくなったら滅入りますね。解消法とかあったら逆に教えてほしいです。
陶芸は心を落ち着けてやるべきだと思うんですけど、全然落ち着かないです。

──お寺と通じるとこがあるような・・・僧侶としてのお仕事は?

僧侶の方も頑張らないとと思ってます。今はお寺も陶芸もどちらも見習い状態です。写経も修業時代にはさんざんやりましたけど・・・。依頼があったら拝みに行ったり、隣のお寺の檀家まわりを手伝ったりします。

──でも、お好きな陶芸をやりながら家業もできるっていうのは、うらやましいですよね。

両立して上手くやっていけるように、これからも頑張っていこうと思います。

──今日はいろんなお話を聞かせていただいて、どうもありがとうございました。

ありがとうございました。

──やわらかい口調にほんわかとした作品がぴったりな佐々木さんでした。陶芸についても丁寧に教えていただき、本当にありがとうございました。

佐々木 智也さん(伊方町)

陶芸作家 兼 僧侶

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