
──取材した日は「内子ワイナリー」の定休日だったのですが、訪ねてみると仕込みの真っ最中。藤渕さん自らタンクのブドウを混ぜていらっしゃいました。
──おはようございます。今はどのような作業をされているのでしょうか?
赤ワインを作っているので、ブドウの皮や搾りかすを沈める作業をしています。朝夕毎日です。
──何日間くらいされるのですか?
この作業は15日間。発酵が終わって、お酒になったら大丈夫。今は皮と種が浮き上がってきてます。お酒になるにしたがって徐々に皮と種から成分が溶け出て、最終的には溶けなかった部分だけが残るんです。
──では、この状態で何日目ですか?
これは4日目。混ぜるコツは、始めはゆっくり。そして柔らかく優しく愛情を込めて。そうしないと、味の荒いワインに仕上がるといわれていますから。混ぜるのは楽しいですよ、だんだんワインの香りがしてきて。
──毎朝お一人でされているのですか?
今日は定休日で従業員が休みだから自分がしないと。普段は従業員もやりますが、3日に1回は必ず自分の目で見て調整しています。
──このタンク一つでどのくらい作れるのですか?
200リットルとれるんで・・・2つのタンクで720ミリリットルが550本くらい。
──赤ワインはタンク1つだけですか?
(隣のタンクを指して)2つともやっています。
女性にはロゼや白が圧倒的な人気で、赤は男性に人気がありますね。ブドウのポリフェノールとかビタミンとか健康にいいものがいろいろありますけど、体のためにワインを飲まれる方が多いようですね。
──この発酵の作業は何回目ですか?
今年のブドウで仕込んで、9月から4回目ですね。赤、白、ロゼと順番につくります。
──じゃあ、年間にするとかなりの本数作れますね。
年間の目標は1万本。でも今年は原料の確保が不作でできんかったんで。まあ、7,000本くらいできればいいなぁと。お客さんや販売してくれる人に「ないですよ」っていうのはいかんことなんで、原料確保に努めたんですが、頼んでる農家さんもうちも、不作だったんでね。
これが、仕上がっているものです。10月に仕込んだ白ワイン。これが赤ワイン。このタンクは瓶詰め前のワイン。いい香りがするよ。
──(蓋を開けると)すごい!いいにおい!すごくフレッシュな甘いブドウの香りと、よく知っているワインの香りと・・・うわぁ。
ここで1ヶ月くらい熟成させて、瓶詰め。
──そんなに早くできるんですか!
これはワインの醸造をする最新式のタンクで温度調整をして最適に保つので醸造が早いんですが、自然に任せる従来の方法だと60日くらいかかります。
──こちらは見学させてくれるんですか?
窓の外から見てもらいます。作業をする時は必ず消毒をしてから入るのですが、あまり人が入ると菌を持ち込んでしまって失敗することがあるんですよ。発酵させる間の今が一番危険な状態なんで。
──貴重な見学、ありがとうございました。さて併設されているレストランに場所を移しました。では、ワインを作ろうと思ったきっかけなんですけど・・・
2〜30年前フランスを旅していて現地で飲んだワインが日本で飲む時と何かが違い美味しかったのと、自分がやっている農家レストランや観光ブドウ園のお客さんに「こんな美味しいブドウでワインを作ってもらいたいな」「ワインが飲みたいな」という声が多かったので「自分のブドウでワインを作ってみたい」という想いからです。もともと私もワインが好きでした。
──やりたくても、お酒は作れませんよね。それでも夢は捨てきれず?
そうですね。しかし全国でも自分で作ったブドウでワインを作りたいというブドウ農家の人は大勢いて、国に陳情したこともあります。特区ができ、内子町が特区の申請をして認可されました。内子町の特定農業者が税務署の許可を得るとワインの醸造をすることができます。特定農業者とは、ブドウ農家であり農家民宿や農家レストランを経営し、農業委員会が認めた農家のことです。
ワイン醸造技術や酒税法についての研修も必要で長い道のりでした。
商品化して皆さんに飲んでいただいて「美味しい」と言われるものを作るために、いい指導者に恵まれ、ワイナリーの先輩と交流をしたり、大学の先生に指導していただいたりしました。
おかげで満足のいくワインが誕生しました。
──本当の「夢ワイン」なんですね。ところでこちらのワイナリーとレストランは結構な山の上ですが、ブドウ栽培に適した土地はどういう環境なんですか?
ワインの原料となるブドウの栽培には、霧が入る土地がいいといわれています。それは、霧は湿度になるので酵母菌がブドウに宿るというか、つきやすくなるからです。フランスやイタリアでは夕日の当たる西向きで霧が入る土地でないと、ワインを買い上げる値段が下がるそうです。
──へぇ、それではこちらがワイン用の畑ですか?(レストランの向かいはブドウ畑でした)
ここはワイン用のヤマブドウを植えています。この場所を選んだのも、「内子の町が眼下に見下ろせて、晴れた日には小田深山まで見えて、できたてのワインを飲みながらおいしい料理が食べられる」そんなことをしたいって友達に話したのがきっかけで、「いいよ、やれやれ」って持っていた土地を無償に近い形で貸してくれまして。
本当は人通りがいい場所で始めるのが商売の常道ですけど、あえて逆の場所を選んだら(なかなか細く曲がりくねった坂道なんで)若い人たちがキャーキャー言いながら来てくれるんで嬉しくなりますね。
──若い方の関心も高そうですね。結構メディアに取り上げられてるみたいですし。
40代くらいまでの若い方や女性が多いですよね、ワインを飲む方は。夫婦で来られる場合は奥さんが運転してこられることが多いんですが、「私が飲むから帰りはあなた運転してね」ってなるんです。 「あなたは買って帰ってお家で飲んだら?」というような感じの人が多いですね。
──私もさきほど試飲させてもらいましたが、とてもおいしく頂きました。ありがとうございます。
自分達のワインが商品化できているか、ワイン通の人にどのくらい評価してもらえるかというのが一つのテーマでした。ヨーロッパのワインや高級ワインに近づけるとか勝負するとかじゃなく、地産地消・内子独自のワインで、しかもヨーロッパの格調高い香りも備えている、そんなワインを作りたい。
それに私も何回かヨーロッパに行って高級酒のブドウを生で食べたときに、「生で食べた味がそのままワインの味になっている」と自分の舌で感じました。つまり巨峰やピオーネで作るとその味になるので、巨峰やピオーネを美味しいと感じる日本人の舌に合わないことはない、と思ったんですね。
しかしアドバイスしてくれる人はみんな「それはダメだ、ヨーロッパのワイン専用種を植えなさい」「ヨーロッパのワイン専用種じゃないと絶対成功はしませんよ」と。でも、ソムリエやワイン通の方に来てもらって、出来上がったものを飲んでもらったら「あれ?これ本当に日本の生食用ブドウで作ったの?いいものが出来ましたね」と言われました。内子ワインとして恥ずかしくないですね。
──すごいです。やりましたね。
発売前の2月に、自分達も高級ワインを買って飲みくらべました。これから売る2,360円のワインとどう違うんだろうと思って。でも私達にはわかりませんでした。そこで、ワイン通の人に来てもらって飲み比べてもらったんですよ。
──ほぉ、その道のプロが来てくれたんですね。
高級ワインと私達の作ったワインを注ぎ分けたグラスを全部で15杯並べて、グラスの下に見えないように名前を書いておきました。さすがだなぁ、見事に当てましたね。
でも「しかし良いワインができましたねぇ」と褒めてくれました。
それに松山の高級フランス料理レストランや有名デパートでもおいてもらっています。
内子夢ワインは、大切な人や家族、友人とのパーティーや結婚披露宴の乾杯に使って頂きたいと願っています。「善良な人から善良な人へ」というのがモットーです。
──今後の展望はありますか?
自分の目標としているのは「しなやかなワイン」。今は温度を一生懸命きめ細やかに調整して、どうなるのか観察しながらやっている。辛口でも柔らかさやしなやかさを感じてほしい。勉強不足な部分も多いので、どういう発酵をしたのか日々のデータをずっと残して。あとは個室のあるレストランにしたいのや、ワイン坂(ワイナリーまでの坂)を飾りたいのと・・・いろいろです。
──ありがとうございました。多くの人に内子に訪れて頂きたいですね。本日はお休みのところお邪魔して、大変お世話になりました。







