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冨永 幸男さん(大洲市)

──冨永さんは大洲市(旧肱川町)岩谷地区で約500年の伝統をもつ愛媛県指定無形民俗文化財「山鳥坂鎮縄神楽(やまとさかしめかぐら)」のメンバーで、舞手として舞台に上がります。今回は内子町五十崎の三嶋神社へ神楽を奉納する合間を縫って取材させていただきました。

──舞手の中でも長いと伺ったのですが、神楽を始められてから何年くらいになるのですか?

*

35年くらいでしょうかね。

──ん?お年を聞いてもよいでしょうか。

昭和22年生まれなんで。64歳になります。 25歳ごろから始めたんだけど、結婚してから5年ほどは、はずかしくてやめとったんです。

──冨永さんの普段のお仕事というのは?

森林組合の作業班です。

──皆さん同じ職場なのですか?

いえ、みんなそれぞれ職種は違います。公務員がいたり測量士がいたり。

*
本日の最年長の和氣八郎さん。5時間に渡り大太鼓を叩いていました。

──何人くらいいらっしゃるのですか?

11〜12人くらいです。

80歳過ぎの人が2人おります、今日は都合で一人来られんのですが、もう一人は今日もずっと太鼓を叩きます。私は上から4番目ですね。一番若いのは30代後半くらいかな。

──楽器も演奏するのですか?

僕は舞うほうなんで、やりません。
お囃子(はやし)は大太鼓・小太鼓・鐘・笛がありますが、笛はちいとねぇ、難しい。笛があれば引き立つんだけど・・・。基本的には足を崩したりせず、ずっと正座しとかんといけんので、つらいですね。長い演目では30分ほどずっと続きます。舞を見ながら強弱をつけることで盛り上げてくれるんですよ。

──神楽を始めたきっかけを伺ってもよろしいでしょうか?

地域の方に入ってくれって頼まれたんです。最初は「何もしなくていいから。お姫様役で座っといてくれるだけでいいから。」っていうのがきっかけですね。お姫様というのは「大蛇(おろち)退治」という演目の大蛇の生け贄になって、そのあと、素戔嗚尊(すさのおのみこと)のお嫁さんになるという役です。それから何年かやっていて、ある程度舞も覚えていってはいたんですが、 結婚して5年くらい休んで。そしたらまた入ってくれっていうもんで、それからはずっと。

──いろんな役をやられるのですか?得意な役とかありますか?

いろんな役をやりますよ。得意なのは「盆の舞」とか、あとは大蛇のような切られ役ですかね。

──(インタビュー側が)神楽というものをまだ見たことがないので、全く想像出来ないのですが ・・・

(神楽は)見てもらったら即わかるんですけど・・・。
盆の舞というのは、鏡に見立てたお盆を持って舞うんです。最初の一人が正確に舞って、あとからひょっとこの面をつけた私が真似をして舞います。そのあと、お客さんを舞台にあげて一緒にやってみます。なのでぜひ!

──えっと・・・他にはどの演目に出演されますか?

*

出るのは・・・
「大蛇退治」の八岐大蛇(やまたのおろち)。
「熊襲退治」の熊襲(くまそ)。これも切られる役です。
「長刀の舞」。刀とナギナタで決闘するんです。
「盆の舞」。ひょっとこの面をつけています。
「鯛釣り」では「禰宜(ねぎ)」という役で。

──台本のようなものはあるのですか?

「神歌本(じんかぼん)」というものはあるんですけど。最初に舞(演目)の趣旨を説明して、それから舞台へ出て舞うわけです。
「鯛釣り」のように台詞があるものもあれば「盆の舞」のように舞うだけのものもあります。

──実際に新しく入ってきた人へ教える時はどのようにするのですか?

舞の動き方そのものはどこにも書いてないんです。基本の舞は一つなんで、それさえしっかり覚えておけば、多少複雑になっても大丈夫ですね。3年くらいしっかりやれば舞えるようにはなります。
僕は大蛇をやり始めて10年くらいしてやっと「うまくなったね」と言われるようになりました。それまではただ「大蛇を舞ってる」だけなんですよね。だからお酒の飲み方からとぐろの巻き方、死に際までずいぶん勉強しました。そこらへんに蛇がいるじゃないですか。アオダイショウとか。それをつついたりして襲ってくるところなんかも見て研究して。衣装を着た時に大蛇になりきってないと意味がないので、勉強はしたつもりです。

──う〜ん。早く見てみたいです。

問答の中にはわかりにくい言葉があると思います。昔の言葉であったり、方言をそのまま使いますから。 神様を喜ばせるものなんで、神に仕えるような仕草やそれにあうような動きをしないと。まあ、やってみたらわかるんですけどね。みんなに経験してほしいなぁ。
神歌も今では言葉を短くしてますし、舞も短くなってきたようです。もともと神楽は一昼夜やってたものを現在では3〜4時間ぐらいに短縮してますから、長かった時のことは僕らも知らんのです。

──年に何回くらいこのように神社に奉納されるのですか?

16、7回くらいかな。大洲の柳沢地区の神楽は40回とかしてるそうです。それに「 年に何回か」っていっても春だけだから、ほぼ毎週、週に何日もしてるんじゃないですか。

──え?神楽って季節ものなんですか?

新年明けてからですね。「春神楽、夢に見てもいい・・・」とかなんとかいう言い伝えもあるんですよ。

──へ〜。春の風物詩なんですね。今日は内子町五十崎の三嶋神社ですが、(大洲市の肱川から)出張して来られるんですね?

いろんな神社に呼ばれるんで、そこでやるんです。毎年同じところでやるんで、スケジュールや場所は決まってるんですがね。以前はこの三嶋神社も別のところがやってたんですが、いっぺん変えてみようかってことになって、それ以来ずっと呼んでもらっています。

──神社に奉納する以外に学校などで地域学習のようなこともされているとか?

ありますよ。地元の肱川町内で学校巡りが。全部の演目は出来ないので1時間半くらい、奉納とは違うのであまり形式張ったことはしないで、幼稚園児から小学6年生まで見てもらいます。

*
最年少の谷田泰亮さん。 小さい頃から神楽を見ていて、一度愛媛を離れたものの、戻ってきた際に「舞手」として入りたいと冨永さんにお願いしたそうです。

──若い世代に引き継ぐために・・・

この1年はお休みしてますが、「マメッコクラブ」と言って週1〜2回程していました。学校の学習発表会に間に合うよう大蛇退治の練習をして、発表してもらってたんですけど。 なかなかね、子供さんも少ないし。
自分が子供の頃は神社でよく神楽があったんですけど、だんだん見に来る人が少なくなって・・・。ですからお盆とか秋に、地元でやっています。

──こちらの神楽は長い伝統があるんですよね。これからも続けていくために若い世代を勧誘したりしているのですか?

「山鳥坂鎮縄神楽」は約500年の伝統があるといわれています。でもなかなか入ってもらえんですよ。
神楽は土曜・日曜だけじゃなく平日もあるんで、会社を休んでまで行くことは難しいから。そこは行政などのバックアップで続けていかんと愛媛の文化がすたるぞって思うんですけどね。

高知県の檮原の神楽なんかは女の人もいますね。うちは男だけです。人数も少なくなってきてるんで、なにかしら伝統文化を守っていくようなシステムが出来ないと・・・。
勤めに出てても「(神楽に)行ってこい!」って地域ぐるみで出来るような環境がないとだめですね。これ(神楽)だけでは食べていけんのだから。高知県は行政がバックアップして役場行きよろうが農協行きよろうが部員に入ってたら優先的にそちらに行きなさいというようなシステムになっているんです。

──なかなか難しい問題です。

 

──それでは、その約500年の伝統を誇る「山鳥坂鎮縄神楽」をダイジェストでご覧ください!

※音が出ますのでご注意ください。

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──いや〜!すごい迫力、すごい盛況ぶりです!小さなお子さんも食い入るように見ていましたね。大蛇はまるで生きてるかのようにしっぽの先まで動いてましたが、どのくらい長いのですか?

*

そうですね、長さは6メートルくらいありますよ。

──冨永さんは大蛇役を初めてどのくらいになるんでしょう?

入ってからずっとだから30年。顔は見えん、切られ役。縁の下の力持ちです。大蛇は自分なりに研究したし努力もしたと思っていますが、他の人に言わしたら、なんじゃ思とるかも。でもやってみろ!と言ったときに出来んと思います。ある程度は出来るけど、(自分のように)他の人にも研究してやってもらいたい。僕らも教えてもらったんではなくて、先輩たちを見て覚えてきたんで、そういうことを見てもらいたい。言葉ではわかってもらえんから。

──隠れた努力が生き生きとした大蛇になってるんですね。初めて神楽を見ましたが、本当に面白く、見ていてわくわくしました。お客さんを巻き込んでの演出、あれはアドリブなんですか?

そう、長年やりよると考えなくても自然と出来ます。パッとひらめくんです。言葉が出てこんかったらこっちが負け。そういう掛け合いが大事なんです。お客さんの上をいかんと。まだまだ頑張らんといかんけどね。

──「舞う」のはゆったりとしたイメージだったのですが、とても動きが速いんですね。「ドン」っていうナギナタで床を突く音や足を踏み鳴らす音も迫力がありますよね。

*

「長刀」があったでしょ。カチカチって火花が散って、音がせんと迫力が出ないでしょう。「ドン!」と踏み込んで突かんと「コン」と突いたんじゃ意味がないですよね。無意識に音を出してるんですよ。

「舞」は大洲の柳沢がもっと上手です。「四天」はゆっくりとした動きが見ていて優雅ですよ。一方こちらはテンポが早くて、迫力では負けんと思う。「舞」もやるし「芸」もやる。それはみんなお互いに「よそには負けんぞ」という思いがあるんでしょう。

──ほかを見たことがないのでなんとも言えないのですが、どこの神楽もこんな感じですか?

お客さんとのやりとりは、うちが一番だと思います(笑)。

それに他のところは大蛇の口から煙が出たり、広島の方では本当に8つ頭があったり、見せ方が「ショー」の様だけど、こういう小さいとこでする分ではよそには負けん。それに地域性が出ますね。お酒飲む場面がなかったり、すぐ決闘になって細かい演技がなかったり。だから大蛇退治はうちの特徴とも言えるかな。

──見せていただいてる間、お客さんも大蛇退治を見にくるんだ、って言っていました。この時間は一番人が多くなるんぞって。

 

──それではホームページをご覧いただいている皆さんに一言お願いします。

小さい田舎でやっているんですけど、小さいながらも「大蛇退治」だけは見せ物ではなくて実際の本当の神楽を伝えたいという想いでやっています。一度ご覧になっていただけるとわかると思います。

*
本日の舞台(内子町三嶋神社)

──どちらに行けば見られるのでしょう?

今年の2月〜4月ごろまでの神楽のスケジュールは既に決まっていますので、保存会に問い合わせていただけたら。(ページ下のスケジュール表参照)

あとはお盆の8月13日。地元の岩谷で毎年「夜神楽(よかぐら)」をやっています。もともと盆踊りをしよったんやけどみんな踊らんなってきたので、「それじゃ夜神楽でもやったら?」ってことで、もう10年。地域の伝統文化を覚えていてほしいし、今では町外からのお客さんの方が多くて、岩谷地区の人口より多い600人くらいが見に来てくださいます。
それに夜神楽は特別に大きな大蛇が空を舞いますんで・・・初代は25メートル。現在のは50メートルくらいあります。迫力ありますんで、ぜひ見に来てください。

──本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

こちらこそ。また見に来てくださいね。

山鳥坂鎮縄神楽のお問い合わせ

 大洲市肱川町山鳥坂73番地
 大洲市肱川公民館 文化財担当
 TEL:0893−34−2307
山鳥坂鎮縄神楽 活動スケジュール
上演日 場所 住所 時間 ※
8月13日 旧岩谷小学校 大洲市肱川町山鳥坂3744 19:00〜
11月下旬
(平成23年は11月16日)
松島神社 大洲市肱川町山鳥坂3846 10:00〜

※時間は変更になる場合があります。

平成23年の予定
上演日 場    所
2月20日 三嶋神社 (内子町宿間)
3月13日 須賀神社 (大洲市菅田町菅田)
3月26日 大本神社 (大洲市野佐来)
3月27日 天満宮 (大洲市肱川町【月野尾地区】)
4月2日 三嶋神社 (大洲市河辺町川上)
4月3日 三嶋神社 (内子町北表)
4月9日 宇都宮神社 (大洲市菅田町菅田)
4月10日 村島神社 (大洲市菅田町宇津【村島地区】)
4月13日 三嶋神社 (大洲市肱川町【中野地区】)
4月15日 三嶋神社 (大洲市森山)
4月16日 須賀神社 (大洲市若宮)
4月17日 三嶋神社 (大洲市蔵川)
4月24日 日枝神社 (大洲市菅田町宇津)
4月28日 竜王神社 (大洲市肱川町【小藪地区】)
4月29日 白尾神社 (大洲市松尾)
5月1日 中居谷集会所 (大洲市肱川町中居谷)
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